玉掛けの張力|つり角度別の1本あたり荷重と計算例
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2本づりで荷を吊ると、1本にかかる力は「質量÷本数」より大きくなる。つり角度60度で約1.15倍、90度で約1.41倍、120度で2倍。 スリングの使用荷重は、この角度を掛けたあとの張力と比べて判定する。 法令と通達で読めるのは安全係数6以上とつり角度の原則まで。使用荷重そのものは製品ごとの表示で見る。
つり角度別の張力早見表
質量1tの荷を2本で吊ったときの張力。角度は向かい合う2本のロープの開き角。係数は 1÷cos(θ÷2)。
| 角度 | 係数 | 1本あたり |
|---|---|---|
| 0度(垂直) | 1.000 | 0.500 t |
| 30度 | 1.035 | 0.518 t |
| 60度 | 1.155 | 0.577 t |
| 90度 | 1.414 | 0.707 t |
| 120度 | 2.000 | 1.000 t |
60度から90度で2割強、90度から120度で4割強増える。角度が開くほど増え方が急になる。
張力の式
T = W ÷ n ÷ cos(θ÷2)
Wは荷の質量(t)、nはつり本数、θはつり角度。ロープが斜めになると、荷を真上に支える成分は張力の cos(θ÷2) 倍しかない。その不足分だけロープの張力が大きくなる。
前提は、荷重が各ロープに均等に分かれること。重心が偏った荷や、長さのそろわない4本づりでは、この前提が崩れる。
例題1 鋼材1.6tを2本2点づり
使用荷重1.0tのスリング2本で、1.6tの鋼材を吊る。
| つり角度 | 計算 | 1本の張力 | 使用荷重1.0tとの比較 |
|---|---|---|---|
| 60度 | 1.6 ÷ 2 ÷ 0.866 | 0.924 t | OK |
| 90度 | 1.6 ÷ 2 ÷ 0.707 | 1.131 t | NG |
| 120度 | 1.6 ÷ 2 ÷ 0.500 | 1.600 t | NG |
同じスリングでも、角度だけで判定が変わる。120度はガイドラインの原則90度以内からも外れる。90度でNGなら、長いスリングに替えて角度を60度程度に戻すか、使用荷重の大きい製品にする。
切断荷重から見る場合は、60度の張力0.924tに6を掛けて5.54t。ワイヤロープの切断荷重がこれ以上なら、クレーン則第213条の安全係数6以上を満たす計算になる。
例題2 3.0tを4本づり、つり角度60度
均等に分かれるなら、3.0 ÷ 4 ÷ 0.866 = 0.866 t。
ただ、4本の長さや掛け位置がずれると、対角の2本で荷を持つ状態になることがある。そのときは 3.0 ÷ 2 ÷ 0.866 = 1.732 t。均等の場合のちょうど2倍になる。
4本づりを何本で受ける前提でスリングを選ぶかは、クレーン則の第213条にもガイドラインにも数値がない。前提を作業計画に書いておく。
判定の手順
- 荷の質量を銘板、図面、計算で押さえる
- つり角度を決め、張力Tを出す
- スリングの使用荷重と比べる。掛け方で使用荷重が変わる製品は、その掛け方の値で比べる
- つり角度が通達の原則の範囲かを見る
使用荷重が分からないスリングは、この計算に使えない。
公表されている基準と、現場で確かめる値
| 区分 | 内容 | 見る資料 |
|---|---|---|
| 法令(公表) | 玉掛け用ワイヤロープの安全係数6以上 | クレーン等安全規則 第213条 |
| 法令(公表) | つり上げ荷重1t以上のクレーン等の玉掛けは技能講習修了者、1t未満は特別教育 | 安衛法施行令 第20条第16号、クレーン則 第221条・第222条 |
| 通達(公表) | つり角度は原則90度以内、2本4点半掛けつりは原則60度以内 | 玉掛け作業の安全に係るガイドライン(基発第96号) |
| 製品資料 | スリングの使用荷重 | 製品の表示、製造者の資料 |
| 現場ごと | 荷の実際の質量、重心の位置 | 図面、銘板、作業計画 |
クランプやハッカーを使う場合は、同じガイドラインに別の角度がある。つり角度60度以内、横つりクランプの掛け巾角度30度以内。
ツールで計算する
質量を入れて本数と角度を選ぶと、1本の張力が出る。玉掛けの張力計算
その作業に玉掛けの技能講習が要るかは、この作業に要る資格は?で判定できる。
出典
確認日はいずれも2026年11月2日。